跡付

跡付 あとづけ 〖尻取り系〗
有名詩歌などの語句の尻の字または部分を次の文句の頭に置いて連ねていくものを〈跡付〉あるいは〈尻取り付廻(つけまわ)し〉という。古典にも次の説明がみえる。
江戸にては尻取り付廻しと云、京摂にては跡付と云有、句の下の詞を次の句の上に置事なり 『皇都午睡』初編上
 要するに尻取りであることに変わりなく、連作が自分一人のものに限らない、あるいは土地による呼称の相違、というだけのことである。
【例】
東山跡付
ふとん着て寝たる姿や丸山のほとりの春景色、しきりに左阿弥の三味の音、音にきこえし端の寮、料理のあつらえ正あみか、かつちりあたる也阿弥でも、もちつとげん阿弥見えませぬ、ませぬ舞子のそのなかに、中にとりわけ弁才天、てんごう御言いなこちや惚れん、れん阿弥大抵じや値ができん、できたら大谷のかのうたり、二人で遊ぶ長楽寺、地の神さんが連れだちて、たつてお寄りと二軒茶屋、やたらに詣る祇園さん、山門ながら知恩院、陰気なお客はくわん阿弥の、乗せる舟から長喜庵か、 (中略)じやらじやら流るる滝本の、元の孔雀は入り替り、代りの女が北佐野か、駈けて来たのは佐野屋の源左衛門か、可愛いかわいと高台寺、大事の口に風ひかす、ひかす三味線御迷惑、曰く因縁もうしまい、稲荷の狐でくわいくわいくわいと、とかく都は面白や 『言語遊戯考』
数詞入り尻取り付廻し
六じやの口をのがれたる、たるは道づれ世はなさけ、なさけの四郎高綱で、つなでかく縄十文字、十文字の情にわしやほれた、ほれた百までわしや九十九まで、九までなしたる中じやもの、じやもの葵の二葉山、… 『三養雑記』巻一