アクロスティック暗号

アクロスティック暗号 ──あんごう 〖アクロスティック系〗
秘密にしておきたい文句等を相手に送る場合に、手の込んだアクロスティック仕立てにしたものを〈アクロスティック暗号〉という。
アクロスティック暗号は日本でも〈折句〉として来歴が古い。村上天皇が折句を用い「合せ薫物少し」と御製を披露した例(556ページ)などがある。現代の作例は引用に支障があるため、一つ創作することにした。
【例】
暗号はがきの解読         荻生作
彼のもとへ彼女から次のはがきが届いた。
 こ、今日(こんにち)ちは。どもってもいい、もどかしい舌がうらめめしい。でも愛して、あきらめきれず、もたもた言葉で、らりって、酒に心(しん)底(そこ)酔い、ぐいとあけてます。
いかにも酔いの回ったような舌足らずな文面だ。彼ははじめ心配顔で読んでいたが、じっと文面を見つめているうち、はたと手で膝を打ち、破顔した。そして思わず叫んだのである、「やったぜベィビー」と。
この文を一行七文字ずつ、平仮名に配列しなおしてみよう。各句頭尾を矢印方向に読む。
① ここんにちちわ
↓ どもってもいい
  もどかしいした
  がうらめめしい
  でもあいしてあ
  きらめきれずも
  たもたことばで
  らりってさけに
  しんそこよいぐ ↑
  いとあけてます ②
これを漢字かな混じり文にすると「子どもが出来たらしい。すぐにでも会いたいわ」のメッセージとなる。つまりダブルアクロスティック暗号文になっているため、先の平叙文だけでは、暗号文であることになかなか気づかれない。