文芸遊戯体系 歌謡詞遊戯系

歌謡詞遊戯系 かようしのゆうぎけい
歌謡文学あるいは歌謡文芸に含まれる幅広い詞章を対象に、さらに言語遊戯性が色濃く表れているものを〈歌謡詞遊戯〉として総括した。これのほとんどが音曲詞で、その範囲も民謡・俗謡・流行歌から童(わらべ)唄(うた)など、多岐にわたっている。
歌謡詞には古くから言葉遊びが積極的に取り入れられ、ことに庶民受けする遊戯詞がもてはやされてきた。
口承の上代神楽歌はその象徴的なもので、たとえば、
♪総角(あげまき)を早稲田(わさだ)に遣りて や そを思(も)ふと そを思ふと そを思ふと そを思ふと そを思ふと 上代神楽歌「総角(あげまき)」本(もと)
のように、さながら溝の磨り減ったレコード盤よろしく、畳語に次ぐ畳語でおかしみを強調している。
 これらからレトロ詞でつづる歌謡遊戯の、魅惑的な別世界へと案内するためのガイド役である。
《参考》
大神基政
おほよそこゝろうべきことは、時のこゑといふ事あり、春は双調、夏は黄鍾調、秋は平調、冬は盤渉調、壱越調は中央なり、土の声といふ、おほやうこれを時のこゑといふべし、また一日一夜にとりても、ときの声あり、すなはち天感応のこゑなり、しかのなき、うぐひすの声、むしのね、ほらのこゑ、わが心にをもしろしと思ふ声に、おのづからあふこと有、これを又ときのこゑといふことあり、古文にいはく、暗夜にはしらをうちて、ねうしの候をしる、白中に声をきゝて、午未のあやまりをたゞす、むかしかしこかりけるくわんげんもの、香の火もみず、かいのこゑもきかず、ほしのくらゐをもたづねず、月のたくるをさたせず、人にたゞいまいくときといふに、もしは子とも丑ともいふを、まくらにあるはしらをもつて、たゞいまは子にこそありけれ、うしにこそありけれと、しりけるにこそはあんめれ、『竜鳴抄』上