文芸遊戯系統 命名遊び系

命名遊び系 めいめいあそびけい
名付けを言語遊戯化することを〈命名遊び〉と総称している。なかには商品名などのように、遊びを離れて商業目的に使われているものもあるが、それとて形態上は言葉遊びの要素を多分に含んでいる。
姓名はじめ物名・商品名などは、他の類似存在と個別化するために便宜的に付けられる符号でしかない。ところがこの符号、ひとたびマスコミで喧伝されたり当たりをとったりすると、人をたちまち有名にし、商品をヒットセラーに化けさせる。そして思わぬ「言霊(ことだま)の不可思議」を現代人に思い知らせてくれる。
現在、新生児の命名や商業ネーミングの実用書が何冊も出ているように、命名分野は間口が広く、庶民にとって格好の興味の対象となっている。さらに人は、単なる符号としての本来の姓名に満足せず、別に号や筆名、没後の戒名まで付けたがる。こうした曲折の過程で、遊びの要素がどんどん加味されることになる。
《参考》
命名の対象       荻生まとめ
現在すでに、森羅万象大半の事物を対象に名付けがすみ、〈呼称〉もしくは〈名詞〉として存在する。命名分野においても呼称の整理が進み、なかでも「人名」と「地名」はその区分が個別に及んでいるため、種類の多さでは他に抜き出ている。識別化情報処理が生んだ結果である。
例として、生物界で鳥類を例に引くと、その個体数は全世界の人口数をはるかに超えている。しかし鳥類は固有名詞をもたないから、類→目→科→属→種といった生物学分類法に従っての一般名詞だけですみ、その数も限りがある。
しかし個別標識をもつ人名や地名の場合は、事情が大きく異なる。古代、集団社会での名付けは敬神行為に結びついていたことが、古代、各地で編纂された風土記によって断片的に語られている。また〈盟神(くか)探湯(たち)〉に見るように、命名行為は冒してはならない聖域でもあったのである。