文芸遊戯体系 譬え系

譬え系 たとえけい
物事に比(よそ)えて表すことを「譬え」といい、その譬えに用いる言葉を〈譬え言〉という。
譬えそのものは修辞上の一技法で、物事の比喩の表現である。比喩を大別すると直喩(例=りんごのような赤い頬)と暗喩または隠喩(例=弘法も筆の誤り)になるが、譬えはもちろん暗喩である。暗喩のほうが直喩よりも譬えて優れたものが多く、表現上のパンチも効く。暗喩自体にも言語遊戯としての一面が備わっている。
成句やことわざには譬えを用いたものがじつに多く、そのほとんどが長い時代を経て伝承されてきた。たとえば天明期(一七八一〜一七八九)、すでに『譬喩尽(たとえづくし)』(編著者未詳)という大冊が成っていることからも、譬え言は相当の数に達していることがわかる。