文芸遊戯の系統 尻取り系

尻取り系 しりとりけい
前の句の尻の一〜三音を次の句の頭(かしら)に用い次から次へと言葉を連ね結んでいく遊びを〈尻取り〉という。普通二人以上の複数で順繰りに演じる。
語尾に「ん」の付くもの、先に出たもの名を再び使うことは禁じられている。言葉が出なくなったら負け。途中一人、二人と抜けていき、最後に残った者を勝とする。連想による語句の連らなりが強いほど技巧的、手持ち語彙の豊かさが勝敗を左右する。
尻取りは〈早口言葉〉などとともに、古くから人気のある言葉遊びである。本文の〈大祓(おおはらえ)の詞(ことば)〉に見るように、もともと祝詞を荘厳な詞章に演出するための修辞技法であった。これが平安末期になると、長歌の各句を文字の連鎖で繋げていく〈文字鎖〉となり、いっそう言語遊戯性が加味される。さらに室町時代に入り官女らの間で、相手の和歌詠の末尾を受け、その文字で始まる別の有名歌をもって結ぶ口承遊びが流行った。
近世では、〈口合〉〈地口〉をもとに〈口合段々〉や〈地口尻取り〉がもてはやされるようになる。そのかたわら〈都路〉のような尻取り文芸ともいえる作品が生み出され、言葉遊びとしての尻取りの隆盛に拍車がかかる。明治時代、「牡丹に唐獅子…」のように有名な口拍子尻取りが大流行。即興で創作する尻取りから、定形文句を覚えて口承を愉しむ尻取りへと変容したことも、注目すべき時代変化の傾向である。