文芸遊戯体系 遊戯詞系

遊戯詞系 ゆうぎしけい
世に「○○コトバ」という特定の意味をもつ言葉がたくさん存在する。古来さまざまな状況下で作られ、使われ、そして消え去った○○コトバを大辞典から入念に拾い出したら、おそらく一〇〇語は集まろう。
〈遊戯詞〉と仮称した系統語群は、言語遊戯を形作る遊戯詞のうち、他のどの系にも属さない類を寄せ集め一系としたものである。…とは一応建前であって、これら過半のものは、他のいずれかの系統に組み込めないこともない。これは今後の課題として残したい。
《参考》
原篤信(益軒)
和語をとく事は謎をとくが如し、其の法訣をしるべし、是れをとくに凡八の要訣あり、○一に自語は、天地(アメツチ)男女(ヲメ)父母(チチハハ)などの類、上古の時自然に云出せる語也、其の故はかりがたし、みだりに義理をつけてとくべからず、○二に転語は、五音相通によりて名づけし語也、上(カミ)を転じて君(キミ)とし、高(タカ)を転じて竹(タケ)とし、黒(クロシ)を転じて烏(カラス)とし、盗(ヌスミ)を転じて鼠(ネズミ)とし、染(ソメ)を転じて墨(スミ)とするの類なり、又転語にして略語をかねたるも多し、且音を転じて和訓とせし類あり、後にしるす、○三に略語は、ことばを略するを云ふ、ひゆるを氷(ヒ)とし、しばしくらきをしぐれとし、かすみかゞやくを春日(カスガ)とし、たちなびくをたなびくとし、文出(フンデ)を筆とし、墨研(スミスリ)を硯とし、宮(ミヤ)所を都とし、かへる手をかへでとし、いさぎよきをさぎとし、かへりを鳫とし、前垣を籬(マガキ)とし、きこえを声とするの類なり、上略中略下略あり、又略語にして転をかさねたるも多し、○四に借語は、他の名とことばをかり、其のまゝ用ひて名づけたる也、日をかりて火とし、天(アメ)をかりて雨とし、地(ツチ)をかりて土とし、上をかりて神とし、髪とし、疾(トシ)をかりて年とし、蔓をかりて弦とし、潮をかりて塩とし、炭をかりて墨とするの類也、○五に義語は、義理を以て名づけたるなり、諸越を唐とし、気生(イキホヒ)を勢(イキホヒ)とし、明時(アカトキ)を暁(アカツキ)とし、口無を梔子(クチナシ)とする類、又是れを合語とも云ふ、二語を合せたる故也、又義語を略したるは即略語也、○六に反(ハン)語は、かな返し也、はたおりを服部(ハトリ)とし、かるがゆえをかれとし、かれをけとし、ひらを葉(ハ)とし、とほつあはうみをとほたうみとし、あはうみをあふみとし、きえをけとし、見えをめとし、やすくきゆるを雪とするの類多し、(後略)
『日本釈名』凡例